by ユタカ 99.05.20 

◆第19回◆

書店出店の資金計画 その1

またまた、第18回を更新してから3ヶ月以上がたってしまいました。すみません。
さっそく「書店開業」のための実務的な資金計画・開業までの手順を記載していきます。

1.出版流通の基礎知識

当社のホームページを見ていただいている方の多くが出版流通の知識をお持ちでないという事を前提に、資金計画・事業計画を立てる上で必要不可欠な出版流通の基礎知識を簡単に列挙しておきます。

  1. 再販制度

    出版物は例外的に「定価販売」をしてよいと認められている商品です。
    出版社・取次(問屋)・書店 間で取引きを行う時にはまず「再販契約書」を交わす事が原則で、この契約書により、定価販売が守られています。
    将来的に「本」の再販制度がどうなるか、再販制度が良いのかどうか、などたくさんの問題を含んでいますが、現状においては取次(問屋)は「再販契約」を交わさないと取引きを開始しません。
    その他、値引き・景品など細かい規定があり、それを守っていただく事が取引きの前提となります。

  2. 委託制度

    ※ 出版物のほとんどの商品が、売れ残ったら仕入値で返品できる委託商品です。
    しかし、その商品を「委託商品」にするかどうかは出版社の判断ですので、例外はたくさんあります。(例 岩波書店の本は全て買切りで、返品することはできません。また原則的には委託で販売している出版社でも美術書などの豪華本は買切りにする事が多い)また委託商品でも一定期間が過ぎると返品ができません。
    出版物は他の商品と比較して不良在庫の出にくい商品といえますが、管理が悪いと「仕入の失敗」(買切り品の売れ残り)「委託期間切れ」による不良在庫が生じます。ロスとしては、その他に万引きがあります。
    それら全てを含めて1%前後のロスは必ず生じると考えておいてよいでしょう。1%以内なら管理の良い店、2%以上あると商品管理に問題がある店と判断できます。
    こうしたロスを含めると書店の平均的な売上総利益率(粗利率)は21.5%前後になります。

    ※ 「委託制度」というと誤解されることが多いのですが、出版流通における委託制度とはあくまで仕入したほとんどの商品が、売れ残ったら返品できる_という意味で、仕入れた商品の代金は取次(問屋)へ支払わなければなりません。
    すなわち、50坪の書店を開業する場合、50坪の棚を埋める商品の仕入れ値(2000万円から3000万円)は資金計画の中で用意しておいていただく必要があるのです。

    ※ 例外として出版社の用意する「常備商品」 取次の用意する「基本図書」がありますが、在庫全体に占める割合は僅少です。

  3. 支払サイト

    取次と書店の間の支払いサイトは、月末締め・翌月末支払い が原則です。
    すなわち簡単にいうと、3月中に送品した商品代金から3月中に受け取った返品の金額を差し引いて4月初めに請求書を発行します。この金額を4月末までに書店は取次に支払う訳です。
    この場合、取次から書店への送品は納品伝票の日付を基準としており、書店から取次への返品は、返品を開梱し、返品伝票を入力する作業に基づいています。
    返品については若干のタイムラグが生じるので、これは在庫の増減とともに書店の資金繰りの難しさを生じさせています。書店を経営するには十分な運転資金を必要とするのです。

  4. 運送形態・発売日

    新刊商品は、発売日の当日に書店の店頭に配達されます。
    送品運賃は取次ぎ負担、返品運賃は書店負担です。
    製本所が東京とその周辺に固まっているため、商品は全て(わずかの例外を除いて)東京から出荷されます。したがって東京からの距離におおじて商品の到着日(発売日)がことなります。たとえば、
     3月10日付の納品伝票の商品においては、
        3月10日に配達される地区   当日発売地区
        3月11日に配達される地区   2日目発売地区
        3月12日に配達される地区   3日目発売地区
        3月13日に配達される地区   4日目発売地区
    とわかれます。(今年の秋には沖縄を除いて全ての地区が3日目以内の発売になる予定です。どの地区が該当するかは、あまりに細かくなるのではぶきます。)
    さて、送品運賃が取次負担というのも理由の1つですが、取次が書店と取引きを開始するには月取引金額が一定以上ある事が条件になります。
    一定以上というその基準については各取次によって異なると思いますが、当社の場合、月取引金額200万円以上を目安にしています。それ以下ですと赤字になるからです。

  5. 書店の粗利

    取次から書店へ商品を卸す卸値は、商品の定価に対する率として計算されます。この率を正味と呼びます。
    正味は出版社・商品によって細かく異なりますが平均するとだいたい、
       雑誌    77%
       コミック  75.8%
       書籍    78%
    ぐらいです。ただし、専門書のなかには非常に高い正味の商品が多く、専門書中心の品揃えをすると粗利率が低くなります。(個人的には、回転率の悪い商品が逆に高正味なのは不合理だと思っていますが。)先に平均的な書店の粗利益率が21.5%としましたが、あくまで一般的な品揃えの書店の場合なわけです。

  6. 担保・保証金

    取次と取引きを開始するにあたっては、担保が必要になります。
    通常、土地などの不動産に根抵当権を設定させていただくか、保証金として現金をおあずかりする事になります。
    根抵当の場合の極度額や保証金の場合の金額などは、月取引金額の2から3ヶ月が目安となります。
    原則は以上ですが、具体的には個々交渉していく事になります。

 

次回は書店開業にかかわる必要資金額について記載します。

 


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